体力や技術が人一倍優れていても、自然界においてはちっぽけな人間、自然の猛威には100%敵うわけはありません。
遭難した彼らは僕以上に体力もあり、山岳会で培った登攀技術も優れていた筈です。また登山装備も上品を揃え、登山計画も緻密に立てていたにもかかわらず遭難してしまいました。
20年の短い人生がただ “運が悪かった” では、あまりにも惨めで残酷です。将来もっともっといろんな山に登って、自然を満喫出来るはずだった彼ら・・・、心からお悔やみ申しあげます。

信州山岳塾に於いては、常日ごろ山行参加者に言っています。「体力や技術があるに越したことはないが、まず自然(山)の摂理を学び、あやふやな自然の猛威はどんな人間の力を持っても太刀打ち出来ない・・・」事を。
自然は毎日、毎分、毎秒変化しています。過去何十回、何百回この山に登ったことがあっても、今日登るこの山の自然は過去に登った山とは全く違うのです。今回の遭難の検証で「道迷いが原因ではないか・・・」と言っておりますが、道迷いこそ、あやふやな自然の変化に対応しなかった、いわゆるあやふやな自然を知らなかったことで招いた事故だったのかも知れません。

山の斜面に積もった雪、止まっているように見えますが、斜面の雪は人間の視覚ではとうてい解らない速度で下方へ動いているのです。もちろん斜度や気温によってその速度は変わってきますが、一日数ミリづつ動いています。そこに何らかの外的刺激を受けることによって、その速度が増し、雪崩が発生します。

40年以上山に携わっている僕自身でも、あやふやな自然界の猛威に遭遇すれば、体力も技術もゼロに等しいことを肝に命じて行動しています。今まで遭難せずに来られたのは “運” も良かったことと、年齢を重ねたおかげで多少なりとも自然の摂理を知り始めたおかげだと思っております。(信州山岳塾・岩渕)

PS
もし自分がこの時のリーダーだったら・・・と考えました。答えは簡単に出ました。